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2005年06月02日

アイデアに「古い」、「新しい」はない

ガトリングガン
[写真提供]たけぞう道場
司馬遼太郎の歴史小説『峠』は、越後長岡藩の家老・河井継之助の波乱の生涯を描いた、短編ながら感動の名作です。

新潟県長岡市に行った時、酒場で地元の人と話をする機会があって、「長岡の有名人は誰か?」という質問をしたところ...

まず「山本五十六」、
そして「田中角栄」...

少し考えてから「河井継之助」の名が挙がりました。

昨今では、小泉首相の国会所信表明演説(平成13年)に取り上げられた「米百俵」の小林虎三郎の方が有名かも知れません。

話を河井継之助に戻します。

彼は幕府側に身を置きながら、早い段階から幕府の崩壊を予測し、長岡藩の「局外中立」を目指して藩戦力の近代化を図ります。

小説『峠』の中で、継之助が横浜の兵器商人から、アメリカで製造されたばかりで日本には2つしかない最新兵器を購入するくだりがあります。

それが「ガトリングガン」という機関砲です。(またはガトリング砲)

ガトリングガンはアメリカ南北戦争初期に発明されます。

米国の医師ガトリングが考案したもので、単発発射式の大砲しかなかった当時、砲弾を連続して発射できる機関砲は戦史史上でも画期的大発明でした。

しかし、当時は黒色火薬を使用していたため、起爆が不安定な上、重くて操作性が悪い、非常に高価などの要因により、実戦に使用されることはなく、やがて時が経過し、いつのまにか過去のものとして消えていったのです。

それから一世紀を経たベトナム戦争で...

「戦闘機はミサイルのみを搭載していればよい」という戦略主義の考えから、アメリカの戦闘機は当初、ミサイル以外の武器を搭載していませんでした。

しかし実戦では、ミサイルのみを搭載した戦闘機の被撃墜率が激増します。

そして、ミサイル発射後にも敵戦闘機と戦える武器装備が急務となってきて、再び「ガトリングガン」が蘇ります。

ガトリングの設計思想に基づいた「バルカン砲」が誕生すると、あっという間に被撃墜率が改善するのです。

こうして、『ガトリング』の名前とアイデアは一世紀の時を隔てて完全に復活します。

どのような素晴らしいアイデアであっても、それを実現する技術環境、社会環境などが整わないと世の中に受け入れてもらえない、ということは多々あります。

アイデアというのは「古いから使えない」「新しいものに価値がある」ということではなく、それを実現するための手段が存在し、かつ、その時代のニーズにマッチしていたかどうか、と言うことなのでしょう。

投稿者 messiah : 2005年06月02日 10:09

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コメント

はじめまして。司馬ファンのものです。実際に長岡市に行かれたんですね。河井継之助のような考え方の人は、実は日本にいくらでもいるのかもしれませんね。世に出てこない場合は、環境か、自らの意志かどちらかわかりませんが、人材というのは探せばどこにでもいると思います。こちらで書かれているアイデアについても、激しく同感です。時代にマッチしているか否か。願わくば自分が時代のニーズを満たしていますように・・また寄らせてもらいますね。失礼します。

投稿者 じゅんたろう : 2005年06月07日 23:31

じゅんたろうさん コメント有難うございます。

小説『峠』の最後の場面に出てきますが、
北越戦争に敗れ負傷した河井継之助が、会津に退却する行程で詠んだ句があります。

八十里 こしぬけ武士の越す峠

開明論者であり、封建制度の崩壊を見通しながら、長岡藩を率いて官軍と戦う、という矛盾した行動をとった奥にあったものは何でしょうか?

人は時として、自分の信条・信念とは大きく異なる行動を余儀なくされることがありますね。

継之助には、官軍に早々と降伏して藩を存続させるという選択肢もあった。(その方が賢明だったかも知れない)

しかし彼が最後に選択したのは、藩存続ではなく、武士道に殉じる道だったのです。

司馬遼太郎は小説の最後の場面で、継之助が最後に詠んだ「八十里・・・」の句に思いを凝縮させて...複雑で矛盾した生き方を余儀なくされる避けて通れない「峠」のようなものが人生にはある、と言いたかったのではないでしょうか。

アイデアに「古い」、「新しい」はないと書きましたが、
どの時代にも、複雑で矛盾した「峠」が存在することに古い、新しいはない、と思います。

じゅんたろうさん、これからもよろしくお願いします。

(※ じゅんたろうさんのサイトへは、右上の投稿者[じゅんたろう]をクリック)

投稿者 でたとこ : 2005年06月08日 09:36

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