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2005年06月17日
「沈黙の螺旋」を斬る 勇気あるハードコア
自分の意見が少数であると感じた時、人は孤立するのを恐れて沈黙してしまうものです。
その結果、多数派の意見はさらに強まり、少数派の意見はさらにかき消されていく...これが「沈黙の螺旋(らせん)」理論です。
1970年代初頭、ドイツの社会心理学者ノエル=ノイマン氏が提唱した理論で、発想の原点には「孤立への恐怖」があります。
例えば、会議の席で一番最初に発言するのは避けたいと思う。
満員の電車の中で政治や宗教の議論をするのを控える。何故なら、自分の意見はその場に居合わせた人びとに受け容れられない少数派の意見かもしれない。それを言ってしまうと自分は孤立してしまうのではないかと怖れる。
人は通常、最初はじっと様子を見て、周りがどんな考えを持っているのかを探るのです。
会議やミーティングの場合、司会から指名された人たちの発言やそれに対する人びとの反応を確かめ、自分の意見が多数派だと確認できた時点で...ぼつりぼつりと発言を始める。
逆に、自分の意見が少数派であると認識した人は沈黙する。へたに発言したら孤立するからである。
発言されない意見は客観的には存在しないのと同じ。こうして、多数派の意見はますます多数派に見え、少数派の意見はますます少数に見えるという螺旋運動が始まるのです。
しかし、中には孤立をおそれないで発言する人がいる。これを”ハードコア”といいます。
(※ ハードコアは、中核的な・筋金入りの・頑迷なという意味と、凶悪な・性描写の露骨な、という意味を合わせ持つ)
お隣の中国に「沈黙の螺旋」に流されない”ハードコア”がいました。
北京市の劉志華・副市長は6/10に北京で開かれた会議で、中国人のスポーツ観戦の態度を「礼儀がない」と批判したのです。
副市長は演説の原稿を離れて、「五輪の成功には良好なソフト面での環境が必要であり、一流の観客も含まれる」と述べたそうです。
そして、サッカー場での中国サポーターのヤジについて「素養が低い」と指摘。
続けて、卓球の試合で相手選手のミスに観客が拍手して歓声を上げることに「北京や中国の選手がこのような状況で勝っても、どれほど立派だろうか」と批判。
さらに続けて、テニスの世界大会の試合に関して、観客が携帯電話を鳴らしたり、表彰式になると続々と帰ってしまうことについて「礼儀がないだけでなく、風格もない」と痛烈に批判。
この発言を中国各紙は一切報道していません。
スポーツは人々を熱くさせるため、どこの国でもナショナリズムに起因する手前勝手はあるものですが、中国のスポーツ観戦態度が目立ってよくないことは事実。
副市長の発言は本当の愛国心から生じたものでしょう。
要職にある人物が、言い難いことを公の場で堂々と発言したことは、勇気ある行動として賞賛に値します。
「沈黙の螺旋」に陥らないこのような”ハードコア”は、日本からも世界からもどんどん出てきて欲しいと思います。
投稿者 messiah : 2005年06月17日 09:50
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