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2005年03月02日

発想力 + 情熱 = 非常識

非常識の中に難問を解決する手法が隠されている」と断言します。この人は、レールの上でも道路の上でも走れる新しい乗り物を開発して輸送事業として確立する、という非常識を実現した凄い人なのです。へぇ...

柿沼博彦氏
(現在、JR北海道の専務)
[写真]asahi.com : MYTOWN : 北海道より

(憧れ)
子供の頃に水陸両用車に憧れました。水の中と陸の上...この全く正反対の環境を克服して突っ走る車は鉄腕アトムやマッハGO!GO!GO!の漫画の世界の空想の産物でしかありませんでした。

(経緯)
その水陸両用車的発想に近いのが、レール上でも道路上でも走れる車。1930年代からイギリス、ドイツの鉄道や日本の旧陸軍が相次いで試験車両を開発したが、車輪がガタついたり、モードチェンジがうまく行かなかったりでいずれも失敗しています。

(出発)
柿沼氏がレールと道路の両用車(名付けてDMV:デュアル・モード・ビークル)の開発構想を打ち出した時、周囲はみんな「レールはツルツル。タイヤが空回りするだけ」と冷ややかでした。

(発想)
しかし、「やってみなければ分からない」と言い続けていたある日、通勤途中に幼稚園の送迎バスを見て「この大きさならレールにすっぽり収まる」とDMVの本体にすることを思いついたのです。

(実行)
DMVは、レール上では前のタイヤだけ鉄の車輪を使い(切替時間10秒程)、後のタイヤはレール上に残します。この時に除雪車の技術を応用してタイヤをレールに密着させることに成功。雪対策なども解決して昨年夏には試作車が完成し、その後ローカル線で長期走行試験が行われています。本格運転は2~3年後です。

 
DMVの外観(前は鉄の車輪、後はゴムタイヤ)        レール上を走るDMV(運転席は普通の自動車と同じ)

[写真]からしら萬朝報こちらより

(教訓)
柿沼氏は「鉄道から道路へ、という発想が失敗を生んできた」と言います。車をレールの上でも走れるように改造する「発想の転換」が失敗の歴史に終止符を打ったのです。

(目的)
JR北海道は、赤字ローカル線を廃止せず維持する「切り札」としてこのDMVの開発に本腰を入れています。最終的にコストが大幅に削減できるほか、鉄道とバスの双方の利点を生かし駅から商業施設の玄関に直接乗り入れたり、高齢者の遠距離通院などのきめ細かい対応を可能にしたいとのことです。

これが実現すれば、お荷物だった赤字ローカル線が高齢者をターゲットにした新規ビジネスを支えるインフラになる可能性もあります。それは...凄い!

(余談)
DMVだけではありません。柿沼氏は「電力回生システム」という、不可能と言われた夢のシステムも実現しています。

電車の車体に取り付けたモーターを発電機として回し、架線に電力を送り返して別の電車が活用する。自動車も船も飛行機もまねのできない省エネルギーシステムです。

しかし、このシステムは非常に周波数の高い高調波電流が発生し、架線を伝って電気設備に障害を与える危険が大きいため、誰もが夢のシステムとしてあきらめていました。

ところが柿沼氏は、1995年この高調波の影響を抑えることに成功し、消費電力の15~20%を戻せる世界初の電力回生システム搭載電車を翌1996年に誕生させます。

「これから、このシステムが主流になる」という柿沼氏の予言通り、電力回生システムは東海道新幹線の700系のぞみ型車両や長野新幹線に導入され、またオーストラリアの大地を走る電車にも採用されています。

(おまけ)
発想力 + 情熱 = 非常識(旧態依然とした常識を打破した非常識)
凄い人がいるものです。JR北海道はラッキーです。しかし、もっとラッキーなのは北海道でDMVに乗れる人たちでしょう。

投稿者 messiah : 2005年03月02日 08:44

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