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2005年03月26日

協調と裏切り 「囚人のジレンマ」が示唆するもの Part1

敵対的買収、焦土作戦、白馬の騎士...と、めまぐるしく揺れるニッポン放送株を巡る騒動が新たな局面に入っています。この騒動は今後、企業間のリレーションシップ構築の在り方に焦点が移っていきそうです。ところで、「囚人のジレンマ」という理論があります。1950年、アメリカのランド研究所で考案され、後にミシガン大学・政治学部のロバート・アクセルロード博士によってコンピュータ・シミュレーションゲームの選手権大会が開催されるまでに到ったゲーム理論です。この理論に従うと「ニッポン放送株騒動」も簡単に解決?するかも...。

[アニメ写真]シャドールーム~タイピングやゲームの部屋~より

エゴイストは常に他人を押し退けて生きていくものなのか?エゴイストが自発的に他人と協調することはないのか?エゴイストは権力による強制がなければ協調しないものなのか?.....米ソ冷戦時代の緊迫した政治関係を克明に観察してきたアクセルロード博士は1つの試みとして、人間関係の両極にある「協調」と「裏切り」という心理作用をゲームを通じて検証することで、人間関係の良好な構築に必要な要素とは何かについて実験をします。

その基になったのが「囚人のジレンマ」です。(詳細はStardust Crownサイトのこちらを参照ください)

「囚人のジレンマ」とは...

共犯で逮捕されて牢屋に放り込まれたルパン3世と次元大介の二人。銭形警部に、ある悪魔のささやきを持ちかけられます。


銭形  「なあ、ルパン。もし相棒の次元大介の罪を証言すれば、次元は5年の刑とする代わりに....」

銭形  「お前は無罪放免にしてやるぜ。」

ルパン 「.....」

銭形  「どうだ、いい話だろ。ルパン」

ルパン 「.....」

銭形  「だが、もし2人とも罪の証言をした場合には、2人そろって4年の刑だ。」

ルパン 「.....」

ルパンは悩む。ルパンと次元大介の2人は別々の独房に入れられていて相談することは許されない。

「俺が証言して、次元が沈黙したとすると次元は5年間牢屋に入る代わりに俺は無罪放免される。」

「だが、次元が証言したらどうなる。もし俺が黙っていると俺の方が5年の刑だ。こりゃあ、ひでぇ。せめて俺も証言しておけば4年の刑で済む。」

ということは、次元大介の出方に関らず、ルパンは証言したほうが(次元大介を裏切った方が)良いということになる。

しかし、同じ条件を与えられている次元大介もきっと同じことを考えるだろう。その結果は「4年の刑」である。双方じっと黙っていれば3年で済んだものが頭をひねったあげくに4年になってしまう。

それでは、やはり沈黙していた方がよいのか?相手もそうしてくれれば良いが、もし相手が裏切って証言すれば、自分は最悪の5年の刑になる。そんなことはできない。

事前に相談できるのであれば「お互いに黙っていような!」と取り決めておいて、2人とも3年の刑で済ませることもできるのだがなあ..........。

とこんなふうに、あらゆる条件の下で最良の結果になるように行動しようとすれば、するほど、結果はどうもうまくいかない。これが「ジレンマ」といわれる所以です。

「囚人のジレンマ」というゲーム理論についてアクセルロード博士はこう言います。

「2つの会社が互いに取引していると考えよう。ここで、双方が互いに協力し合えば利害関係でぶつかり合う部分はあったとしてもそれ以上に多くの取引が成立してお互いの利益は全体としてみると拡大する。しかし、一方だけが有利な条件で取引をすると一方だけが繁栄して他方は不利益をこうむる。このゲームは自分の利益を最大限に伸ばそうと考えるエゴイスティックな存在同士が、どのような関りを持てばお互いに利益を上げることができるかを考えるものである。」

「囚人のジレンマ」ゲームのルールは大変簡単です。
 (1) ゲームは2人のプレーヤーで行う。
 (2) プレーヤーは「協調」と「裏切り」の2種類のカードを持っている。
 (3) プレーヤーは最初、相手が出すカードを知らない状況で、2種類のカードの中から1つを選択しなければならない。
 (4) 両者が「協調」カードを出した場合は互いに3点を得る。
 (5) 両者が異なるカードを出した場合、「裏切り」カ-ドを出した方は5点を得るが、「協調」カードの方は0点となる。
 (6) 両者が「裏切り」カードを出した場合、それぞれ1点を得る。
 (7) プレーヤーは互いに、相手のカードを見て次に自分が出すカードを決定する。
 (8) こうして一定回数、カードを出し合って得点を計算していき、最終的に累計得点の高い方を勝ちとする。

得点自分のカード相手のカード得点
3点3点
5点0点
0点5点
1点1点

1978年、博士は心理学・政治学・数学・社会学の分野から、一流のゲーム理論の専門家を14人選んで、このゲームへの招待状を出します。参加者は各自がプログラムを作成して持ち込み、プログラム同士がコンピュータ上で対戦するという仕組みです。

参加者同士が5試合ずつ行うリーグ戦で、全部で120,000回という膨大な数の対戦を行いました。その結果をコンピュータで分析すると意外な、.....というか意外にも、意外でない、意外な結果になったのです。

博士によると、
「驚くことに、高得点を上げた参加者と低い得点の参加者を比べると、たった1つの性質が運命の分かれ目になっていたのです。それは、『自分からは決して裏切らない』という性質です。」

そして、この選手権で見事に優勝したトロント大学・ラポート教授が採用した戦略は、「しっぺ返し」作戦でした。「しっぺ返し」作戦は、初回は必ず「協調」カードを出し、次回以降は相手がその前にとった行為を真似ていくというものです。

つまり、相手が協力すればこちらも協力し、相手が裏切ればこちらも裏切るというごく単純なもので、参加者の持ち込んだプログラム中でステップ数は最も短かったのです。

博士 「最も単純なプログラムが勝利した、と知った時は本当に驚きました。」

その後、博士はさらにゲームへの参加者を募り、第2回目のコンピュータ選手権が開催されます。2回目の参加者には、1回目の詳細データと分析結果が事前に送られました。

第2回目の参加者は劇的に増えて、コンピュータ愛好家をはじめ、物理学・経済学・心理学・数学・社会学・政治学・生物学の分野の専門家(6カ国、62名)が参加して行われました。その結果は......【 続 く 】

(※ 少し記事が長くなり過ぎました。続きは次号で...)

投稿者 messiah : 2005年03月26日 00:00

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