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2005年04月05日

ピンチを乗り越えられるか? 日本版ストリートペーパー

ホームレスが街頭で1冊200円の月刊誌「ビッグイシュー」を売る姿を初めて目にした時、「すごいビジネスモデルを考える人がいるもんだ」とその立案者に感服したものです。

一般的には、社会から排除あるいは否定されてしまっている人たち。彼らを営業(販売員)として雇用するという発想はどこから生まれたものだろう、と。

時は1967年、冬のイギリス。ジョン・バード氏とゴードン・ロディック氏はエジンバラの酒場で出会い、詩人だった二人は詩の話で盛り上がり、たちまち意気投合します。

その後、化粧品会社を創設して会長となったロディック氏は1990年、ニューヨークで「ストリート・ニュース」という新聞をホームレスから買います。その時、ホームレスがストリートペーパーを街頭販売するビジネスアイディアを思いつきます。

そして、ロンドンでのビジネスの可能性を自社で調査させますが「実現の可能性なし」という結果が返ってきます。

1991年、可能性を信じるロディック氏は旧友バード氏に構想を打ち明けて協力を依頼します。快諾したバード氏はすぐに、ホームレスの人々と対話をはじめます。

その当時は、路上生活者や物乞いをする人の数が増えて、大きな社会問題となっていました。ある日、20歳くらいのホームレスの青年にストリートペーパーを売ってみないか、と質問します。

彼は「売ることかい?物乞いに比べりゃ、何だっていいよ。」と返答します。その一言がバード氏に、このビジネスのスローガンを与えます。「物乞いをするくらいなら、何でもする。」

ホームレスは怠け者で自ら進んで物乞いをしている、と言う人たちに突き返してやれるスローガンを見つけたのです。

ビッグイシューの基本理念は、セルフヘルプだとバード氏は言います。人は自分で成し遂げたという達成感によって自信を得て前向きに生きる力を得る。仕事は人々に生きる力を平等に与える一番のツールであると言います。

ここに、問題の一部となったもの(ホームレス自身が)が問題の解決策を担う(自分の力でホームレスを減らしていく)、というビッグイシューの考え方が誕生するのです。

ホームレスの活動に重きをおく雑誌ではなく、誰もが買い続けたくなる魅力的な雑誌をつくり、ホームレスにはその雑誌の販売に従事してもらうというポリシーで、1991年にバード氏はロンドンで「ビッグイシュー」を創刊し大成功を収めるのです。

1992年にビッグイシュー・ノース、1993年にビッグイシュー・スコットランドが発刊され、さらに1993年にはビッグイシュー・ロンドンが中心となりインターナショナル・ネットワーク・オブ・ストリートペーパーズ(INSP)が創設されます。

現在INSPの事務局はスコットランドにあり、世界各地50以上のホームレス問題に取り組むストリートペーパーが加入し、その年間発行部数は2,500万部にのぼります。

その日本版が発刊されたのが2003年9月。発刊当初はマスコミで取り上げられて第4号までは完売。ところが、順調に行くかと思いきや突然、販売部数が激減してしまいます。いったい何があったのでしょう?

新聞によると、原因は昨年の猛暑。身体をいたわって辞めていく販売員が続出した(140人ほどから100人ほどに減った)結果、現在月々150万~200万の赤字になっています。

販売員は健康保険には入っていないし、長期療養となれば直ぐに死活問題となる。無理をして身体を壊したら元も子もない、ということで脱落していったのでしょう。滑り出しは順調だったが、販売員の体力までは”計算外”だったようです。

発刊元のビッグイシュー日本は、紙面をもっと充実させる他、販売員の健康維持のため医師や社会福祉士の協力でカウンセリング体制を整えて生活面でもサポートしていくと表明しています。

ビッグイシュー日本の佐野社長によると、

販売員が元気に売り、中身も面白くなったと言われるように努力し、壁を乗り越えたい。
とのこと。過去に何があったとしても今を賢明に生き抜こうとする恵まれない人たちのために、佐野社長には頑張ってほしいと思います。

筆者ができる事と言えば(本当は「ご苦労さん」くらいのことを言って)ビッグイシューを買ってあげたいけれど.....やっぱり黙ってお金を差し出して買うのがせいぜいのところでしょうか。

※ 現在、ビッグイシューは東京、千葉、横浜、大阪、京都、神戸が販売エリアです。

投稿者 messiah : 2005年04月05日 08:04

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トラックバック時刻: 2005年10月10日 00:25

コメント

はじめまして。TBありがとうございます!
ビッグイシューは、販売員の減少というクライシスを
経験していたのですね。
実は、いつも求めていた有楽町の販売員の方がしばらく
いらっしゃらないので心配しているのですが
どうされているのでしょうね。。。
そういう方の情報もわかるとよいのですが。。。
messiahさんは、どちらで
お求めになるのですか?

投稿者 asakart : 2005年04月05日 20:35

はじめまして
トラックバックありがとうございます。
ビッグイシューがピンチですと・・・
この前、たまたま家の近くで打ってはるのを見て
買いましたが、毎日は売られてないみたいです。
でも保険の問題とか、やはり体が資本なんで無理はしてほしくないですけど・・・
それでは売り上げが落ちてしまったり、安定しないですね。
残った何号も前の号を残してる人とか居ますけど・・・
ガンバレってしか言えないし、まめに買うことしか出来ないです。

投稿者 なんちゃん : 2005年04月05日 23:19

はじめまして。

ビッグイシューは経営難と聞き、各ブログにコメントを書き込んでいる中、このブログに出会いました。

経営難の原因は色々あると思いますが、僕は認知度が低いことが大きいと思います。そこでビッグイシューの知名度を上げるため応援ラジオを始めました。
http://www.voiceblog.jp/bigissue_ouen/

podcasting対応なのでiPod所有のご友人に紹介していただけると嬉しく思います。「通勤・通学電車の中で聞き→下車した駅で雑誌を購入」という流れを作るのが目論見です。

今後もビッグイシューを応援していきましょう!

投稿者 宮崎 : 2005年10月10日 00:30

宮崎さん コメント有難うございます。

そして、ビッグイシューの応援、ご苦労様です。
ビッグイシューが今ひとつ売れない理由の5番目に、行政の支援がないことを挙げておきたいと思います。
(だからこそ、宮崎さんのような方が立ち上がったという事なのですが...)
本来、ホームレスを減らすのは民間ではなく、国や自治体のミッションでしょう。
ビッグイシューは、その国や自治体の取り組みに歯がゆさを感じた民間の有志が始めた事業です。
民間の執念がネット上でムーブメントとなって拡大していけば、世の中を動かせるかも知れません。
宮崎さん、応援していますので頑張ってください。

投稿者 でたとこ : 2005年10月10日 09:06

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