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2005年07月29日

少子化をめぐる悲観論と楽観論の二極

126,869,397人

2005年3月31日現在の日本の人口です。

7/27、総務省が住民基本台帳に基づく人口調査の結果を発表しました。

人口は前年比45,231人(0.04%)増という数字です。

そして、増加数・増加率ともに過去最低を更新しました。

また、男性人口は戦後初めて減少しました。

1年後の2006年には、この増加率が限りなくゼロか、もしくはマイナスに転じるだろうと予測されていますが、それが現実となりそうな実感が数字となって表れてきました。

6/1付エントリーにも書きましが、45年後の2050年には人口が1億人まで減少すると予測されている日本ですが、将来における国力の衰退が気になります。

この点に関して、興味深い論文がありました。神戸大学大学院経済学研究科の山口教授の「日本の少子高齢化と人口減少問題」と題するコラムです。以下に要約してみました。

日本の出生率は何故低下するのか?

出生率低下の原因は、従来からいろいろ言われてきているが、しかし、現在顕著に出生率低下に働いているのが、男性の結婚率の低下(未婚率の上昇)である。

データをチェックしてみましょう。

生涯未婚率は、1970年の男1.7%/女3.3%から、2000年には男12.6%/女5.8%へと増加し、35~39歳での未婚率に至っては、 1970年の男4.7%/女5.8%から、2000年には男25.7%/女13.8%へと増加している。女性に比べて、男性の未婚率の顕著な上昇が読み取れる。

結婚しない男性が激増! 一体どうしたんでしょう?

第1に、社会が未婚者へ寛容になった点、恋愛結婚至上主義により見合い結婚が減少した点、また見合い結婚を世話していた人が減少したことなどがあげられる。
第2に、パラサイトシングルやディンクスが増加した点。(※)
第3に、年金にペナルティがなく、子供を持つか持たないかに関わらず、一定であること。
第4に、人口減少を美化するジャーナリステックな意見が存在すること。
第5に、子供を持つ便益が低下し、逆に費用が増加した点。
第6に、1人の子供を育て、大学まで行かす教育を含む養育費用が、数千万円もする(3人の子供では、1億円近くになる)のに、年金の差がなく、家族手当、児童手当が不十分である点。
等が考えられる。

※ パラサイトシングル(parasite[寄生する]+single)
親と同居して経済的援助を受けたり、日常的な生活の世話を親に依存する未婚者
※ ディンクス(Double income no kids)
共働きで子供を持たない夫婦

この少子化現象に対して悲観論と楽観論があるそうです。

(悲観論)
子供が小さい時は親が子の面倒を、子供が一人前になり親が高齢になれば子が親の面倒をみるという「扶養連鎖」が、高齢化社会の到来で続かなくなっている。すなわち2010年には、国民の4人に1人が65歳以上の高齢者という世界最高齢者国となる。また14歳以下の子供数は高齢者数の半分という少子国になり、「扶養連鎖」が断ち切れるという。さらに、公的年金は、現在は4人が1人を支えているが、2015年には2人が老人1人を支えることになるという。それゆえ、公的年金は給付と負担のバランスが大きく崩れてしまう。

(楽観論)
ある楽観論者によれば、
第1に、人口減少は一人あたり生産性を高めることになる。
第2に、労働人口が減る国で一人あたりの生産性が伸びていること(労働力人口は減少しても、人口自体は増加している国を対象にしている)
第3に、ゆとりある住環境が得られること。
第4に、交通混雑も減少すること。
第5に、女性、高齢者の労働を利用できること。
第6に、短時間就労等、労働の多様化が可能なこと。
第7に、医療、介護や年金のコストを下げ得る。
ゆえに、心配する必要はないという。

筆者はとても楽観論には呼応できませんね。

山口教授はこの楽観論に対して駁論を加えています。

楽観的論者の言い分も、もっともな点が多い。しかし、きわめて大きな問題は、このまま出生率が継続的に低下しても、1人当たり所得は人口が3,000~5,000万人になる今世紀末でも、現在と同じ水準を保つかの印象を与えている点である。かつてのフランスで顕著であったように、出生率はいったん低下すると、回復はきわめて困難な事態となるという点である。筆者も究極的には日本の人口は8,000万人から1億人程度に低下し、またこの程度の人口の方が、多くの良い点もあるのではないか思っている。しかし、江戸時代や明治初期の人口で、今日の1人当たり所得を維持することは到底可能ではないであろう。彼らの言い分は分かるが、出生率低下が止まらない日本で、このような楽観的議論は出生率低下を加速させ、非常に困るものである。多くの楽観論者の論文は、腰を落ち着け、行き届いた理論モデルを形成し、計量的モデルで実証した本格的な研究ではないことが多い。つまり、あまりにもジャーナリステックで、参考文献の記載もなく、非常に無責任な議論が多い。それは善良な市民に誤解を与え易いものである。

と、結んでいます。

筆者もいたく同感です。

直感的にも、少子化による人口減少は国のスタミナをじわじわと奪っていく気がします。

投稿者 messiah : 2005年07月29日 09:33

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