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2005年08月11日

ユニバーサルデザインが作り出した"可能"への変化

長年、慣れ親しんできた動作について「おかしい」と疑ったり、「不自由だ」と感じたりすることはあまりありません。

しかし、それが実は不便だったり、合理的でなかったりする事がある。にも関らず、人はそれを何の抵抗もなく、あるがままに受け入れていることがあります。

汁椀1
by NIKKEI DESIGN
さて、ここに登場するのは味噌汁などの器となる汁椀(しるわん)です。

汁椀は、両手を添えて持ち上げ、一方の手の中指と薬指を糸じりにかけ、同時に、親指で椀のふちに触れ、口に近付ける…。多くの人は2、3秒でこの動作を完了します。

この汁椀の持ち方について、とりわけ注目したいのが、糸じりにかけた指が器用に伸縮し、絶妙なバランスを保ちながら、安定した位置まで深く差し入れられる点です。

しかし、指や手などに障害のある人や高齢者にとっては、この汁椀の持ち方は大変難しく、飲み物や食べ物をこぼすことになってしまいます。

「習慣が、使いにくさをかき消しているのではないか?」

「本当に持ちやすい汁椀を作りたい」と考えた太陽漆器(福島県会津若松市)は、当たり前の動作をつぶさに観察することで、障害者や高齢者でも扱える汁椀を作りました。

目指したのは、両手を使わずワンアクションで持てる汁椀。

いくつかアイデアは浮かびましたが、最も現実的だと思われたのがブランデーグラス風の形でした。

汁椀2気を使ったのが指を差し入れる脚の部分。できるだけ多くの人の手にフィットし、かつ、食器としての安定性も確保しなければならない。そこで、脚の長さと太さを変えた9パターンの試作品を作り、モニター調査を実施。

1回目の調査では132人、2回目の調査では51人を対象に、試作品を実際に手に取ってもらって意見を聞いたのです。

「どのパターンが最もふさわしいか、おおよそ目星はついたものの、モニターの感じ方はまさに人それぞれで、意見を集約することはとても難しいと気付いた」

しかし、調査結果を分析するうちに、「重ねて収納できると便利」「機能性だけではなく美しさもほしい」「仏具に見える」「値段は3,000円以下だとうれしい」など、商品化する上での重要なポイントが見えてきたのでした。

そして、ユーザーは使いやすさだけにお金を払うわけではない。漆器としての美しさや手ごろな価格も重要だという結論に達します。

ユニバーサルデザインを求めていったら、これまでの汁椀の形状がこんなにも変りました。

中には、味噌汁やお吸い物をこんな形の椀で頂くのは、...と抵抗を感じる方もいるでしょう。

しかし、重要なことは、これまで「できなかったこと」が「できる」ようになる、つまり、"可能"への変化なのです。

その変化を味わった人の、感動や興奮が伝わってきそうな逸品です。

投稿者 messiah : 2005年08月11日 05:13

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