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2005年11月09日

「大学の講義はiPodで聴く」というこれからの常識

アメリカの大学で、iPod(アイポッド)やPodcast※(ポッドキャスト)を講義に活用する実験が様々に行われ、各地の大学で成功を収めていると言います。

※ Podcasting(ポッドキャスティング)とも言います。

iPod、Podcast(ing)をご存知ない読者のために簡単に説明しておきましょう。

iPod
iPod
iPodは、白くて可愛いボディに液晶パネルとリング状の操作パネル(クリックホイール)が特徴的な、アップルコンピュータ社製の世界で最も普及しているポータブル音楽プレーヤー。(これはもう有名ですね)

Podcast(ing)は、知る人ぞ知るというヤツ。PodはiPodのPodから取りました。castは放送を意味するbroadcast(ing)から取ってきてプラスした合成語です。つまり、Pod+cast(ing)です。

Podcast(ing)は形のある製品ではありません。

オーディオコンテンツ(朗読、おしゃべり、語りetc.)を「購読」という形で自分の手元のパソコンにダウンロードし、あるいはiPodなどに落として、好きな時に好きな場所でそれを聴く仕組みのことです。

また、自分が作成した音声ファイルなどをWebサイト上に公開することも指しています。

別の言い方をすると、インターネットラジオを自動的に録音して、収集された放送(コンテンツ)を好きな時にiPodなどで聴取するシステム。(個人のラジオ局を誰でも開設できるみたいな。オンデマンドですね)

Podcast
Podcast

ここで重要なポイントがその配信のメカニズムです。

専用ソフト(例えばiTMSなど)に自分の好きなネットラジオ局のアドレスを登録しておくと、最新の放送内容が公開される度に、これを自動的に受信してiPodに転送してくれるのです。

情報が最新の状態に更新されたらユーザーに自動的に知らせてくれる、これが大事な点です。

ブログで言うとRSSですね。(RSSについてはこちらを)

さて、本題に。

米スタンフォード大学では、10月後半から大学の講義やインタビュー、学位授与式のスピーチなどをiTunes Music Storeの中に設けられた「Stanford on iTunes」を通じて一般公開しています。

※ iTunes Music Store(iTMS)はアップルコンピュータ社が運営する世界最大の音楽ネット配信ストア

これにはビックリ。iTMSは元来、ネット上の仮想店舗ですが、仮想だからこそできるわけです。大学の分室をストアの一角に作ってしまうようなことが...

この「Stanford on iTunes」が大変に好評。

「最高に気に入った」

「先週末のレクチャーはどれも参加できなかったが、Stanford on iTunesのおかげで、どこにいてもスタンフォードの精神を感じ取ることができる。これはいままでで最高に優れたものの1つだ」

スタンフォード大学は、世界151ヶ国に180,000人いる同校卒業生に様々なコンテンツを配布するための簡単で安価な方法として「Stanford on iTunes」を利用する。

一方、アップルコンピュータ社はiTMSの中で(常識では考えられない)名門大学の情報が得られることによるブランディングや宣伝効果が得られる。

「売り手よし、買い手よし」

双方にメリットがある、というのがよろしい。(最近、日本で連続的に起こっている企業買収劇とは大違いです)

スタンフォードだけではありません。

デューク大学は2004年秋に、オリエンテーションの資料を収めたiPod1600台を新入生に配りました。

現在同大学では学校全体でiPodを授業に取り入れ、授業の資料を保存して、いつでも、どこでも活用できるようにする計画を進めています。

ブラウン大学は、アップルコンピュータ社と提携し、iTunesを使って学生に授業の模様を配信する試みを進めています。

ワシントン大学は、将来的にはPodcastで学生に講義を配信していこうと考えており、パイロットプログラムの運用を始めています。

ミシガン大学歯学部では、1~2年生の頃に受講した複雑な講義を復習するためにiTunesプログラムが利用されており、学生の人気を集めています。

学生は利便性を求めている。一度聴いたことのある講義の内容を、確認したいと望んでいる。

カリフォルニア大学バークレー校の情報学部博士課程に在籍しているDanah Boyd氏は、スタンフォードの取り組みについて次のようにブログに記しています。

「大学がキャンパスという範囲を越えて知識を提供するようになるのは、私にとってはまたとないチャンスだ。Stanford on iTunesは、大胆かつ明確な方法で知識へのアクセスを確立しようとしている」

それにしても、アップル社のiPod戦略は次から次へと展開していくので目が離せません。

ただそこには、買収合戦を繰り広げる他のIT企業とは一線を画したアップルのポリシーが垣間見えます。

アメリカ独自の弱肉強食ビジネスとは少し路線の異なる、アップル独特のブランドイメージ重視のスマートな戦略が潜んでいるようです。(日本の先端IT企業はアップル以外のアメリカの真似ばかりしている気がしますね)

q.f. CNET Japan

投稿者 messiah : 2005年11月09日 09:58

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