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2006年01月15日

どれが本家? 「正露丸」の商標を巡る争いの半世紀

多くの家庭で常備薬として備えられている「正露丸(せいろがん)」という胃腸薬があります。

テレビCMでもお馴染みですね。あのオレンジ色の箱の薬。

インターネット検索で「正露丸」を調べると、上位に登場するのは「ラッパのマーク・大幸薬品株式会社」ばかり。

そのため、「正露丸=大幸薬品」というイメージがあります。

しかし、下の写真を見れば???ということになります。

正露丸
q.f. 町田忍博物館

ラッパ以外にも、ひょうたん、王冠、熊、錨、鳩....(これらは、全て異なる製薬会社のものです)

昨年11月、正露丸を製造・販売する大幸薬品(大阪府吹田市)は、名称がほぼ同じで箱や容器のデザインが酷似した胃腸薬を売るのは類似商品の販売を禁じた不正競争防止法に違反するとして、和泉薬品工業(大阪府和泉市)を相手取り、販売差し止めと約6400万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしています。

これに対して和泉薬品工業は真っ向から反論。「オレンジ色のデザインは戦後間もない時期から使っている。正露丸とこのデザインは昔から切っても切れない関係」と争う姿勢を示しています。

どうも、正露丸を巡る商標争いは昔から根の深いものがあるようです。

フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」からその争いのルーツを探ってみましょう。

明治時代、日本陸軍は将兵の健康管理に頭を悩ませていた。医学や栄養学が未発達で平均寿命が50歳にも満たなかった19世紀においては、日清戦争の戦没者13309人のうち純粋な戦闘による死者はわずか1415人に過ぎず、残りの11894人は戦病死であり、特に脚気による死亡者は4064人と群を抜いて多かったのだ。
脚気は今日ではビタミンB1の不足によって引き起こされる病態であることが判明しているが、当時は西欧人にはみられない日本独特の風土病と認識されており、都市部富裕層や陸軍の栄養状態良好な若者に多く発症する原因不明の疾患として対策が急がれていた。(海軍は脚気は米、特に精製された白米を主食とする近代日本人の栄養の偏りに起因するという高木兼寛軍医<東京慈恵会医科大学創立者>の仮説を取り入れ、主食にパンや麦飯を採用していたため脚気による犠牲者はほとんど出なかった。)
中国戦線ではまた不衛生な水源による消化器症状も多発しており、陸軍はこの対策にも同時に取り組んでいたが、幸いなことに1902年に中島佐一が開発したクレオソート剤がチフス菌に対して効果のあることが判明する。
陸軍で脚気対策を担当していた森林太郎(文豪として知られる森鴎外その人である)軍医は脚気もまた未知の微生物による感染症であると考えていたため、強力な殺菌力を持つクレオソートは脚気に対しても有効であるに違いないと信じ日露戦争に赴く将兵にこれを大量に配付し連日服用させる事とした。
しかしまだ予防的投薬という概念も一般には浸透していない時代のこと、特異な臭いを放つ得体の知れない薬は敬遠されてなかなか指示通りには飲んでもらえない。そこで軍首脳部は一計を案じ、丸薬を征露丸と名付け、その服薬命令を明治天皇の名を借りて出すことにした。
この機転によってコンプライアンスは著しく向上し、下痢や腹痛を訴える兵士は激減したといわれる。しかし当然のことながら鴎外の期待した脚気菌(そんなものは初めから存在しない)に対する効果は一向に現れず、銀シャリにこだわった陸軍は日露戦争においても全将兵のおよそ3人に1人に相当する25万人が脚気に倒れ、27800人もの尊い生命がこの病のために異国の地で失われることとなった。

このように脚気に対してはまったく無力であった征露丸ですが、その作用、効果は帰還した軍人たちの体験談として多少の誇張も交えて伝えられ、また戦勝ムードの中でネーミングの秀逸さも手伝い「ロシアを倒した万能薬」は多くのメーカーから競い合うように製造販売され、わが国独自の国民薬として普及していくことになります。

第二次世界大戦終結後、国際信義上「征」の字を使うことは好ましくないとの行政指導があり「正露丸」と改められましたが、奈良県の日本医薬品製造株式会社だけは現在も「征露丸」の名前で販売を続けています。

1954年に業界第一位で中島佐一の「忠勇征露丸」製造販売権を継承する大幸薬品が商標登録を行い「正露丸」の名称の独占的使用権を主張しましたが、クレオソートの製法を独自開発し物資不足の第二次大戦中も軍に征露丸の納入を続けた和泉薬品工業などからの反発を受け、20年にわたる裁判の結果1974年3月に「正露丸はクレオソートを主材とした整腸剤の一般的な名称として国民に認識されており、これを固有の商標とした特許庁の審決を取り消す」という最高裁判決が確定しました。

「正露丸という言葉は既に長年にわたり多数の業者によって使用されており、一般名称に過ぎない」との判断を最高裁が示したのが、現在も30を超えるメーカーにより製造が続けられている結果をもたらしています。

それにしても、商標権に関しては問題の根があまりに深すぎ。簡単に解決しそうにありませんねぇ。

q.f. Sankei WebWikipedia

投稿者 messiah : 2006年01月15日 08:26

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