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2005年06月10日
世界を変えていく「ペイ・フォワード」の夢と可能性
あるブログサイトに、「恩返し」と「恩送り」という言葉についてコメンターが次のように書いておられました。
「恩返し」とは、恩を受けた相手に直接恩を返すことで、「恩送り」とは、受けた相手とは限らずにいただいた恩を別の誰かに送り、その誰かがまた別の誰かに送る。・・そうやってみんなが繋がっていく... |
この言葉で思い出したのが、2000年にアメリカで製作されたワーナー・ブラザーズ配給『ペイ・フォワード 可能の王国』という映画です。(原題:Pay it forward)
映画の出来としては賛否あって、ラストの意外な結末が「無意味だ」、「興ざめする」という声もあり、評価が定まらないところがあります。
それは別として、このタイトル「ペイ・フォワード」の意味とは...
家庭に問題を抱える11才のトレバー少年が、社会科の授業で「世界を変えるために何ができるか」という宿題を出されます。
この難題に、トレバー少年は奇想天外なアイデアを出します。
それが、ペイ・フォワード
人から厚意を受けたらその相手に恩返し(ペイ・バック)するのではなく、他の誰かに違う形で厚意を送り、それを運動として広げていく。
日本語に置き換えれば前述の”恩送り”という言葉がピッタリときます。
ペイ・フォワードの仕組みは非常に単純。
つまり、人は他人から厚意を受けた場合、その相手にお返しをしようとする。
そうすると、その厚意は当事者間のみで完結して終わってしまう。
しかし、この厚意を、受けた相手に返すのではなくて、次の人に別な形で”渡して”みたら、どうなるか?それを、1人の人が別の新たな3人に渡していったとしたら・・・
1人から始まった行為が常に複数の人に対して行われていけば、”善意”はネズミ算式に増えていき、やがて”世界を変えていく”というのが「ペイ・フォワード」のシステムです。
少年の考えたユニークなアイデアが広がり、いつしか複雑な社会の中で心に傷を負った大人たちを癒していく...というストーリーですが、現実の世界でこれを実行するのは難しい。
それは厚意を受けた相手が、善意を広げてくれると信じてこそ成立するものだからです。現実には、そんなわずかな信頼ですら成り立ちにくい状況があります。
しかし、原作者のキャサリン・ライアン・ハイドは「ペイ・フォワード」について、こう話します。
「現実に上手くいくとは思わない。でも、試して見る価値はある」
出演者のスペイシーは「映画が提示したアイデアをどう受け止めるかはその人次第。家族を助けるだけでもいいんだよ」と言います。
例えば、電車の中でお年寄りに席を譲れば、立派な「ペイ・フォワード」です。
あえて困っている人を探し出すまでもなく、たまたま困っている人と出会った時に、できる範囲で助けてあげれば、それで十分「ペイ・フォワード」なのです。
そういう時に、相手が「お礼をさせてください」と言ってくる場合があります。
その時に初めて、「お礼なら、次へ渡してください」と説明するところがポイントです。大切なのは相手に見返りを求めないことです。
いつの日か、巡り巡って思わぬ所から自分の元へ「ペイ・フォワード」が渡ってきたら、それは、自分が以前に”次へ渡した”からかも知れない。
「可能の王国」というサブタイトルの通り、一人一人の力は限られていても厚意が階層状となって広がれば、いつか「この殺伐とした世界」を「優しい心が通う世界」に変えられる...「ペイ・フォワード」はそんな夢を与えてくれると同時に、その可能性も示唆しています。
投稿者 messiah : 2005年06月10日 07:42
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トラックバック時刻: 2005年06月16日 16:23
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トラックバック時刻: 2005年06月27日 14:09
コメント
塾生のことを採り上げていただき恐縮です。
若い彼らですが、それぞれが熱く燃える思いを抱いており、最近流行の「萌える」とはちょっと異なるかなと思っています。
山口氏のブログ、話題のタイトルが多岐であることに感銘を受けており、これこそ「コラムニスト」だと拍手を贈ります。
有り難うございました。
投稿者 変なオジサンです。 : 2005年06月10日 12:21
変なオジサンの塾【Phase2】が待ち遠しいですね。
投稿者 でたとこ : 2005年06月10日 13:03
TBやリンクを誠にありがとうございます。
席を譲るだけでも、献血しても、ドナー登録でも
どんな方法でもいいのです。無理なく“自分にも
できること”を実践するだけでいいのです。それが
やがて、大きなうねりになっていくことでしょう。
ホント、少しずつ少しずつ、ゆっくりでもいいから
みなさまの心の中で広がっていって欲しいと願って
います。本当に、ありがとうございます。
投稿者 ペイ・フォワード呼びかけ人 : 2005年06月20日 00:30
ペイ・フォワード呼びかけ人さん コメント有難うございました。
戦争を何度も起こし、相手を傷つけ、自分も傷つき...
疲弊と空虚を心底味わったヨーロッパや日本などの
先進国は「争い」にはほとほと懲りています。
その一方で、急成長している発展途上国や東西冷戦の
縛りから開放されて民族意識が高揚している国々は、
先進国の経てきた同じ「迷いの道」を歩もうとしている
かのようです。
「迷いの道」から少しだけ脱出できた者が、
やがて大人になる子供たちために何か残してあげる
ことが出来れば、それが...
「ペイ・フォワード」、「恩送り」なのかも知れません。
投稿者 でたとこ : 2005年06月20日 10:06
TBありがとうございます。
クロスTBいたします。よろしくお願いいたします・・・。
投稿者 mako : 2005年06月27日 14:12
makoさん 有難うございました。
投稿者 でたとこ : 2005年06月27日 15:09
♪義理と人情をはかりにかけりゃ、義理が重たい、男の世界・・・♪じゃないけど、ねずみ講を連想した私は、難しいかも、
投稿者 persempre : 2005年07月16日 10:05
persempreさん、コメント有難うございます。
ネズミ講、不幸の手紙、チェーンメールetc.
実在する無限連鎖システムは、自分以外の他を犠牲にして自己実現を図る『負』の発想です。
逆に、無限連鎖システムを『正』の発想で考えると「ペイ・フォワード(恩送り)」に昇華されていきますが、この発想を皆が真剣に考える頃に人類が戦争で滅びていないことを願うばかりです。
投稿者 でたとこ : 2005年07月16日 11:08