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2005年08月15日

「効率」と「スピード」だけではいけない時代の予感

アップルコンピュータ社のインターネット音楽配信ストアiTunes Music Store(iTMS)が8/4に日本に上陸すると、わずか4日間で100万曲のダウンロードを記録し、名実ともに日本最大の音楽ダウンロードサイトになりました。(8/6付エントリーで紹介)

iTMSでダウンロードした楽曲をアウトドアに持ち出すためのポータブル音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」は、街中のいたるところで見かける大ヒット商品となっています。iPodは、iTMSがなかった以前から既に日本でも大ヒット商品として実績を作り上げています。

それに対抗するソニーのネットワークウォークマンや松下電器産業のD-Snapオーディオなどのポータブル音楽プレイヤーは、ハードウェアの完成度や提供する機能などのテクノロジーという観点では明らかにiPodに先行していました。

しかし、それら日本製のポータブル音楽プレイヤーとiPodとの間には、魅力という点で、あるいは競争力という点で、どうにも動かしがたい"何か"がありそうなのです。

CNET Japanのコラムニスト森祐治氏によると、iPodの強さの秘密は、アップル自身の言葉を借りて言うならば、「iPodはスローライフを目指している」に尽きるといいます。

それでは、「スローライフ」とは何なのか?

「スローライフ」というのは和製英語(slow+lifeの合成語)ですが、要するに、スピードや効率を重視した現代社会とは対照的に、ゆったりとマイペースで人生を楽しむという考え方やそれを実践したライフスタイルを表しています。

因みに類義語に、ファーストフード(fast food)へのアンチテーゼ(反対理論)から生まれた「スローフード」という言葉があります。

「スローフード」は、伝統的な食材や料理を守り、質の良い食材を提供する生産者を保護し、消費者に味覚に対する啓蒙を行い、食生活を見直そうとする運動のことです。(イタリアで始まったが世界的に広まった)

本題に戻って、そのスローライフ。

それは正に、効率とスピードを最優先して発展してきた代償として、人間らしさが損なわれ殺伐となってしまった現代社会に対するアンチテーゼと言うべきものでしょう。

では、iPodのどこが、どうスローライフなのか?前述の森氏はこのように言っています。

日本の携帯電話を例にとれば、通話という本来の目的以外に、高品質のデジタルカメラや音楽プレイヤーの内蔵はおろか、電子マネーやフルブラウザ、はてはテレビチューナーまでを取り込もうとしている。

日本は、ラジカセというヒット商品の成功体験以来、機能の高度化や複数機能の集積化を「当然」として考えてきた。それが市場のニーズでもあった...そんな時代が長く続いているのです。

iPodには日本が得意とし、なおかつ指向しがちな、機能のテンコ盛りや詰め込みは一切ない。

あるのは、本来の目的である音楽を楽しむために必要十分な機能と、それを実現するために徹底的に考え抜かれた操作性と、シンプルだが深みのある洗練されたフォルムだけなのです。

「iPodが映像などのサービス領域に進出することはないのか」という問いに対し、アップル社の幹部はあっさりと「iPodはスローライフを目指しているんです」と答え、iPodの「スイス・アーミー・ナイフ化」を当然のように否定したというのです。

このアップル社の考え方は、もしかすると大正解なのかも知れない。そんな気がするのは...

かつてハンバーガーなどのファーストフードが登場して日本人の食生活に大きな変化をもたらした事があります。

ファーストフード店の店員は全て、決まったパターンのマニュアル化された問答集を暗記して接客していました。(今でもそうですが)

どこの店に行っても若い店員さんがはっきりした発音で、「いらっしゃいませ」、「ご注文をくりかえします」...マニュアルに定められた通りにしゃべっていました。

しかし、正確だし鮮明だけれども、しゃべっている店員さんの目は蝋人形のように無表情で、まるでロボットと会話しているみたい。その場にいて、心が安らいだり気分が爽快になることは決してありません。

サービスというには程遠い無味乾燥な空気しか感じない人は少なくないと思います。(慣れると恐いもので、だんだん気にしなくなるが)

しかし、本来の接客サービスがこんなものでいいわけがないと常々思っていました。

そしてiPodの発想を知った時に最初に連想したのが...ファーストフードに代表されるサービス業が、効率とスピードを優先した余り"何か"大事なものを落としてしまったのではないか、という疑問です。

マニュアルを丸暗記した店員から得られるサービスには、多くの人がウンザリしているように思います。少なくともそのサービスに対して感動したりする事はほとんどないでしょう。(但し、ごく稀にはあります。それは人次第ということです)

iPodは機能の複雑化、高度化という既成概念を覆す発想で、世界の音楽ファンを魅了することに成功しました。

ファーストフードをはじめとするサービス業においても同様な変化が求められる、強いて言えば<脱マニュアル化>の時代...がやがてやって来る予感がします。

投稿者 messiah : 2005年08月15日 12:35

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