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2006年02月01日

大きな曲がり角に立つ消耗品ビジネス

携帯電話の場合、端末が売れればそれに比例して、その製造元(NTTドコモ、KDDI、ボーダフォンなどのキャリア)の通話料収入が増えます。

製造する機械と、そのランニングコストがセットになっている商品のわかりやすい例です。

一方、カメラ(フィルムカメラ)は本体が売れても、ランニングコストに相当するフィルムは別の会社(フィルムメーカー)が供給するので、カメラメーカーはカメラ本体に収益を依存するしかありません。(その結果、高額になってしまう)

前者は、機械本体とその消耗品の両方で稼げるので、例えば、機械本体を1円で売ろうと、ランニング部分(通話料)で取り戻すという価格戦略ができる世界です。

カメラメーカーとして出発したキャノンは、「カメラをいくら売っても、儲かるのはフィルムメーカー」という経験から、複写機などの"機械と消耗品のセットビジネス"に進出しました。

そして、パソコンの普及に伴いプリンタの需要が高まると、「プリンタ+インクカートリッジのセットビジネス」で大成功を収め、多少機械本体を安く売っても、後でインクカートリッジが利益を取り戻してくれるビジネスモデルを確立したわけです。(そんなわけで、インクカートリッジは価格が高い)

ところがキャノンは現在、このインクカートリッジの使用済み品を回収してインキを充填し、リサイクル品として低価格で売るという、新たなビジネスの台頭に頭を悩ませています。

そして、キャノンがリサイクル業者に対して訴訟を起こした裁判で、知的財産高等裁判所はキャノンの訴えを認めました。

キャノンは2003年に業務用プリンタのカートリッジに電子部品を組み込んで、リサイクル品は動かないような仕掛けを作り、それがリサイクル業者の反発を招き、「リサイクル業者の参入を妨害した」として公正取引委員会から独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を受けた苦い経験があります。

今回はキャノン側が、積極的にカートリッジの回収を呼び掛け、回収した使用済みカートリッジをセメント材料に再利用していることなどをアピールし、環境保全の理念に反していないという評価を得ての勝訴となったようです。

消耗品ビジネスは、プリンタ以外に複写機、使い捨てカメラなども同様の問題を抱えており、今回の裁判の結果、キャノンを含む消耗品ビジネス陣営は少し「ホッ」としたというところでしょうか。

しかし、環境問題の深刻化によって、リサイクルが奨励され、また企業自身がそのコンプライアンスをシビアに問われる中で、消耗品ビジネスは"大きな曲がり角"を迎えていることだけは間違いありません。

q.f. 朝日朝刊2/1

投稿者 messiah : 2006年02月01日 09:01

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